さざなみのよる

 木皿泉の『さざなみのよる』を再読中。初めて木皿作品にふれたのは『すいか』というドラマ。昔出した自分の本『愛は毒か 毒が愛か』にも、たぶんその感動を書き記したはず。
『さざなみのよる』は、NHKスペシャルドラマ『富士ファミリー』の続編的な位置づけと考えたらいいかしら。40代で亡くなったナスミと、その周りの人々が、さまざまな「モノ」で「想い」をつなげていく作品ね。自分が病を得てみると余計に沁みますわ…。

 病気持ちの身であることからいったん離れ、単純なる一読者として味わっても、さまざまな「モノ」のどれもが内側から輝いていく構成にうなるばかり。「ディテールに神が宿る」という言葉の、もっとも美しい具体例を見せていただいている思いです。未読の方は、これから始まる読書の秋に、ぜひ。