今年最後のブログです

 推定6人(ちょっとうぬぼれて増やしてみました)の読者の皆様、今年も本当にありがとうございました。今年は春に体調を大きく崩し、遺言状がわりにフィギュアスケートのことを書き始め、その数か月後に『羽生結弦は助走をしない』という本の発売が決まり、秋あたりから体調も上向き、冬にはビックリするほど良好な数値になり…と、自分でも不思議な流れの中にいたような感じがします。

 私はかかりつけのお医者さんを全面的に信頼していますし、「医師でもない自分が、医学的に根拠のないことを言うのは絶対にダメ」と決めていますが、「やはり好きなことをしている時間は、体のためにもよかったのかな」と、しみじみこの1年を振り返っています。

 フィギュアスケートのエッセイを通じて高山真という存在を知ってくださった方からのメールも、本当に嬉しく拝読いたしました。「みなさん、本当にお優しい方々ばかり」と思うのは、今までにメールをくださった方、ひとりの漏れもなく全員、私の体調のことを気遣ってくださったこと。「ご体調を考えたらメールを差し上げるのもご迷惑かと思いますが」といったことを書き添えてくださった方々ばかりなのです。

 これだけは断言しますが「迷惑」だなんて、とんでもありません。「医学的に根拠のないこと」と言われてしまったらその通りかもしれませんが、体調が劇的に上向いてきた要因のひとつは、「メールを読ませていただいて、暖かく幸せな気持ちになったこと」だと確信しています。厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 本は1月17日に発売になりますが、年末年始は、集英社にお勤めの方々も、印刷所にお勤めの方々もお休みをとる期間。ですので、原稿そのものは11月中にはほとんど仕上げていなくてはいけない状態でした。今回のフィギュアスケート全日本選手権、および代表選考の結果を待っていては、本を平昌オリンピックに間に合う形で出すことはできなかったのです。また、「なるべくお手頃な価格で皆様にお手に取っていただきたい」という思いから、「250ページほど」とページ数の上限を決めていたため、取捨選択せざるをえなかったこともあります。以前サイゾーpremiumさんで書きましたが、私はフィギュアスケートのことをとことん語り始めたら3〜4日は平気でかかってしまうほど「ウザ長い」タイプなのです…。

 ですので、本には書けなかった全日本選手権の感想を皮切りに、集英社新書のサイトで、短期集中連載の形でフィギュアスケートのことを書かせていただくことにしました。

集英社新書のサイト
http://shinsho.shueisha.co.jp/
告知は、集英社新書ツイッターアカウントから発信されるかと思います
https://twitter.com/Shueishashinsho

 第1回は明日、12月27日。第2回目は年明け、1月10日あたりを予定しています。よかったらご一読ください。

 12月17日に発売された文芸誌『小説すばる』1月号でも、期間限定の連載エッセイ「泣けるケーキ」が掲載されています。この『小説すばる』の担当編集さんが、新書の編集部をご紹介くださったのですから、縁や流れは本当にありがたいもの、とさらにしみじみしてみたり。久しぶりに「彼」との思い出にじっくり向き合ってみました。

 そういえば、フィギュアスケートのエッセイから私を知ってくださった方から「ずっと男性だと思っていました。ごめんなさい」というメールを頂戴したこともありました。いえいえ、私は男性で、LGBTのGにあたるゲイです。たぶんこのブログの12月9日のエントリー(『羽生結弦は助走をしない』という新しい本が出ます)をお読みくださってのお便りなのでしょう。「私」という一人称の人間に「彼」という恋人がいた、という表記ですものね。

 その方にもお返事いたしましたが、私にとってそれは嬉しいメールでした。私は、「ゲイとして生きてきた」中で見えてきた自分なりのセンスであるとか、恋愛や人生に対する自分なりのスタンスであるとか、そういったことを書くことでエッセイストとしてのキャリアをスタートさせた人間です。そうした自分のキャリアのプロセスを誇りに思っていますし、そうした「誇り」はずっと持っていたい。

 でも、持っていい「誇り」は、別にひとつでなくてもいいですよね。性別やセクシュアリティに関係なく、純粋に文章そのものを評価してくださる読者の方が、私にメールを送ってくださった。そんな新しい「誇り」を自分の中に加えることができた。今年はそんな嬉しい年でもあったのです。メールをくださった方にもお礼の返信をいたしましたが、改めてここでも御礼申し上げます。ありがとうございました。

 さて、私は久しぶりに近場の温泉にでも行こうかと。今年の春あたりは、旅行を計画する自分を想像することすら難しかった。かかりつけのお医者さんと、読者の皆様方のおかげです。どんなに感謝しても、足りません。本当にありがとうございました。

 皆様、どうぞよいお年をお迎えくださいませ。