がんに負けないワガママボディ…

 肝臓がんがみつかって、早いものでもう2年ほどが経ちました。最初に見つかり処置をして以来、かなり密に検査をしているおかげで、「早い時期に見つけて、早い時期に叩く」のがわりと功を奏していると実感しています。もちろん医者は禁酒を言い渡してきてはいますが、もともとお酒がなくてもまったく不自由しないタイプなので、事実上は何も止められていないのと同じなわけです。

 それにしても不思議なのは、さまざまな治療の副作用として「食欲減退」とか「吐き気」とかの覚悟を当然していたのですが、そういったものがほとんどない、ということ。ま、それを「製薬の世界も日進月歩ね」と素直に喜んで、美味しいものを美味しくいただく生活をずっと続けていれば、やはり落とし穴はあるもので、どうも代謝はずいぶんと落ちてしまったよう。当然、体はどんどん丸くなっていくばかり…。

 先日も友人たちが開いてくれた退院祝いの席で、はちきれんばかりのマイわがままボディに対峙した人々から、「そもそも姐さんは本当に入院手術をしていたのか」と疑問の声が上がる始末です(あたくし、入院中の導尿カテーテルを入れられてる姿を誰にも見せたくないので、基本的には病室の番号を教えないのです。ひとりだけ、あまりにも熱心なお見舞い要求に負けて、カテーテルが取れた後に通したことはありましたが…)。

 つか、わがままボディの影響は当たり前ですが顔面にも及んでいます。小じわ、消えちゃってますからね。ええ、「年を食ったら若さを保つために多少は太れ」の法則、世に言う「松坂慶子方式」あるいは「カトリーヌ・ドヌーヴ方式」を、知らず知らずのうちに体得していたわけです。病気以前より規則正しい生活を心がけているせいか、顔色までよくなってやがんの。友人たちから「入院手術・詐欺疑惑」の声があがるのも致し方ありません。

 それはそれとして、努めて客観的に見る限り、「多少は太れ」の域をはるかに超えてしまっているのも事実です。お洋服マニア時代に買ったドルガバやグッチ、サンローラン、アン・ドゥムルメステールはほとんど入りません…。

 どうにかしたいんですけれどねえ、週明けは小説すばる集英社)の「泣けるケーキ」の打ち合わせで、またケーキを美味しくいただくことになるし、夜は夜で別のお友達が開催する退院祝いで美味しくいただくことになるし…。

 とまあ要するに、この時点で「美味しくいただく」ということを確信しているくらい、体感としてはいい調子なのです。推定4人の読者の皆様方、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。まだまだあたくしはしぶとく世にはばかってやりますわ! このわがままボディと共にね!

 5月17日に小説すばる、発売しております。よろしかったらぜひご一読くださいませ。実を申しますと、この連載は、当初半年の予定でした。それが伸びたのは、ひとえに読者の皆様方のおかげです。心より御礼申し上げます。ありがとうございます。

 木っ端物書きにとって、読者の皆様からのご感想が編集者に届くのは、何よりもありがたいものです。もし、お読みくださったうえでご感想をくださる場合、小説すばるの編集部にお手紙などでお送りをいただけますでしょうか(住所は小説すばるの、後ろから2ページ目に表記してあります)。

 ボディ以上のわがままなお願いであることは百も承知ですが、伏してお願い申し上げます。