定点観測の重要性

 フィギュアスケートの女子のジュニア選手、ツルスカヤの演技にうっとりしておりました高山です。ジャンプの大きさ、幅は従来のまま、ひざと足首の柔らかさを生かしたステップの伸びと「1歩」の大きさ、ケリガンスパイラルからトリプルループまでの流れの見事さ、ダブルアクセルから最後のコンビネーションスピンまでを「ひとつの流れ」としてまとめるあたり、「1年足らずでこんなに上手くなるのか」と驚愕するばかりでした。

 ジャンプの着氷時の、ひざと足首の使い方のうまさで言えば、ジュニア選手では本田真凛が頭ひとつ抜けているかな、と思っているのですが、ツルスカヤはそういった部分まで身につけ、なんというかジュニアなのに完全体の雰囲気になっている。平昌オリンピックにピークが来るかも…。

 さてさて、さまざまなニュースが巷をにぎわせていますが、あたくしたちを興奮のるつぼに叩き込んだのは、『徹子の部屋』に出演した細川たかしの最新のモードでした。ここからは「地毛あろうとお帽子であろうと、頭に乗っている物は全部『ヘッドドレス』として扱う」という大前提で進めさせていただきますが、それにしても細川たかしのヘッドドレスのアバンギャルドさといったらありません。去年の紅白のときも、なかなか味わい深いものがありましたが、そこからさらに進化なさったような…。

 お若い方々はご存じないかもしれませんが、こういった見事なまでにアーティフィシャルなヘッドドレスは、細川たかしが元祖ではありません。あれは10年ほど前のことでしょうか、ニュースで「数百万円するハローキティのネックレスを、自分の娘のためにポンと購入した、北陸の大実業家」のニュースを見たことがございます。そのときの感激をラブピースクラブでのエッセイで書いたのですが(現在はそのページは消えております)、久しぶりにその人を思い出しました。「細川たかし」というブランドと同列に並べますので、あえて敬称略にいたしますが、その人の名は「山田勝三」。ツヤといい毛量の豊かさといい、「緑の黒髪」と呼びたい勝三のヘッドドレス。あれも本当に素晴らしいものでした…。

 勝三が天に召されて以来、「ああいった文字通り『破天荒』なヘッドドレスは、技術が上がった日本の整髪業界(地毛・非地毛の両方を業界を含む)においてはもう見られないのかもしれない」と思っていたあたくしたちにとって、たかしはある意味で希望の星。「森進一の肌」と「細川たかしのヘッドドレス」は、そういう意味では芸能界の二枚看板。これからも定点観測を続けたいと思います…。

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