物々交換のトライ

 フィギュアスケート中国杯浅田真央も素晴らしかったけれど、本郷理華のはつらつとしたリバーダンス! あれは彼女の「生涯のベストプログラム」のひとつになりそうね。男子のボーヤン・ジンの4回転ルッツ+3回転トゥのコンビネーションも凄かった。スケーティングスキルがもっと上がったら(と簡単に書いているけれど、それも大変な難しさだということは知っています)、恐ろしいことになりそうね。

 さてさて、病気してこっち、あたくしったら代謝機能にずいぶんと狂いが生じてしまって、ただいま体重が人生最高値を記録しています。そうね、事情を知らない方が見たら、「どんだけ胃腸が丈夫だよ! いくら健康だからと言ったって丸々するにも程がある」と言われることうけあいよ。いやね、食べる量自体は大幅に減らしているんですよ。食べようと思ったら間違いなく食べられるだろうけれど。

 病気そのものは「治す」という明確な目標をもって向き合っているから、精神的にもそんなに深刻になっていないのだけれど、いままでに買った膨大なお洋服の中で、「何年経ってもラインが古びない、お気に入り」として生き残ったアイテムのことごとくが入らなくなってしまったのは、腸深刻な事態…。ドルガバのジャケットとか、もうボレロにすらならないわ。「ボタンがはまらない」なんてレベルじゃないの。どうしましょう…。

 そんなときにかかってきた、お友達からの電話。「一時退院したお祝いに、蕎麦でサラッとメシ食おうよ」ですって。うふふ、さすがだわ。肉体関係は一切ないお友達ではあるけれど、最近の「あたくしへのお世話度」を見たほかの友人から「姐さんの旦那一号」との通り名をもらい(あたくし芸者かって言うの。「眞子奴」とか名乗ろうかしら)、ニコニコ喜んでいる素敵なメンタリティの持ち主だけのことはあるというもの。揚げ物をオーダーしなければ、外食産業の中では指折りで体に優しい、お蕎麦をチョイスするあたりも素敵ね。

彼が指定したのは、神楽坂のかりべ。あそこ、出汁巻き玉子も美味しいのよね。「ああ、出汁巻き玉子って、出汁だよねえ」と再確認させてくれる逸品よ。

 来年1月に出る本の書下ろし原稿を放り出し(ここがあたしくのダメなところよね…)、電話を切ってウキウキと支度している間、クローゼットの中に、クリーニングから戻ってきてまだビニール袋を開けていないジャケットが目に入ったあたくし。身頃部分は洗いをかけてあえて色むらを出したコットン、ラペル部分はシルクの、ニール・バレットでした。5年以上前に買ったものだけれど、ドルガバとはサイズ感がやや違うため、期待した通りのボディコンシルエット(つまり、体がいちばんシュッと見えるシルエット)にはならなくて、8着あるドルガバのジャケットよりも出番が少なかったんだわ。「今なら、どうかしら…」と思ってきてみたら、やっぱりボレロにもなりませんでした…。

 腹立ちまぎれにゴミ箱に叩き捨てそうになってふと、「そうだわ、ダンナに着せたら似合うかも…」と思い直し、蕎麦屋での待ち合わせを変更。彼の部屋に寄り、すでに準備万端で待っていた彼の、ジョルジオ・アルマーニのフェイクムートンのショートコート(これもあたくしの見立て)を脱がせ、バレットを着せてみたら…。あらやだ、ピッタリでやんの。

「春秋に着る上着を買おうかどうか迷ってたじゃない? 今日はこのアルマーニ上着も暑いだろうし、こっちにしたら? サイズもピッタリだし、お古でよければもらってちょうだい」と申し出ると、彼も大喜び。蕎麦逢瀬が盛り上がったのは言うまでもないわ。

後日、「今日、仕事の打ち合わせで着ていったら、相手に『めちゃくちゃカッコいいジャケットですね。どこで買ったんですか?』って訊かれたよ。名前忘れてたから、ちょっとめくってタグを見てもらったらビックリしてた。『ニール・バレットだってこと、忘れてるんですか!? ある意味さすがです』だって。ほんとありがとうね」と電話をもらったわ。いいえいいえ、喜んでいただけてあたくしも嬉しいわ。5年以上前に買って、まあまあ着たジャケットなんて、古着屋さんでも引き取ってくれるかどうか、怪しいもんだしね。

そうそう、ところでね、あなたが5〜6回くらいしか着てないはずの、あのアルマーニのショートコート(お値段ン十万円)、今ならむしろあたくしの体にピッタリくるはずなのよね…。うふふふふ。