宵闇の大阪はおひとり様のセンスの街

大阪万歳

 世界を代表するラプソディと言えば、ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』でもリストの『ハンガリアン・ラプソディ』でもクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』でもなく、海原千里・万里の『大阪ラプソディ』をおいて他にはない、と思っているのはあたくしだけでしょうか。先日ふっと思い立ち、大阪に遊びに行ったのですが、さすがの味の濃さに、そんな思いはいや増すばかりです。

 まず、電車の中が動物園のようです。ヒョウ柄・トラ柄・シマウマ柄・ウシ柄の占有率の高さに動悸を抑えられません! かてて加えて、殿方の「上下スポーツウェア」率の高さ……。スポーツブランドといえばナイキやアディダス程度しか知らないあたくしにとって、まったく見ず知らずのブランドが幅を利かせています。素晴らしい……。

 お好み焼き→なかたに亭でケーキ→梅田阪急でトム・フォードをひやかすといった、ある意味お約束の流れに加え、今回は、「絶対アンタは好きなはず」という友人のアドバイスに従って、天神橋筋六丁目〜二丁目の、日本一長いアーケードを散策したのですが……。これがもうスゴいのなんの。歓喜の絶叫をあげないよう自分を抑えるのに精一杯でした……。

 外観はあくまでもヨーロッパ風のアーケード、しかし入っているテナントはことごとく中野ブロードウェイか戸越銀座。アッパッパのようなナイティだけを扱っているレディスウェアの専門店や、「これを着こなすためにはパンチパーマにするしかないかも…」といった、おしゃれ極まりないアイテム揃いの殿方専門の洋装店などが、これでもかの勢いでセンスを競うストリート、それが天神……。

 が、天神は、通りを歩くババアたちのほうがおしゃれ度に関しては遥かに上をいく、凄まじくハイレベルな街でもあるのです。入り口から早速、ウシ柄のトップスにピンクのジーンズを穿いたマダムに遭遇し、その場でくずおれそうになりました。中に入って数メートル行くと、上はトラ柄、下はヒョウ柄の、赤木春江に瓜二つのマダムとすれちがい、あたくしったら思わず握手を求める勢い。よくよく見れば、すれちがう5人に1人は、ありえないプリントのパーカーか、ありえない刺繍の入ったスポーツウェアか、不思議な動物に変身してらっしゃいます。すべての方のプライバシーは尊重されるべきですが、この方々に携帯カメラを向けられないのは残念でなりません……。

 あたくし、アーケード散策の直前、梅田阪急のトム・フォードに1時間お篭りして、あれやこれやと試着の鬼と化したはずなのに、天神アーケードを歩いた後では、当然のごとくトムのアイテムなど何ひとつ覚えちゃいませんでしたわ……。

 チヂミやキムチがガラスのショーケースに詰め込まれた韓国料理店の店先で「数ヵ月前に行ったヨン様ツアーで食ったチヂミがどれだけ美味しかったか」を連れのババア(シマウマ柄)に熱弁しているババア(トラ柄)に遭遇したときの感激といったら!

 さて、天神アーケードにおける、あたくし的・目玉商品です。おしゃれ極まりない殿方専門の洋装店のショーウィンドウの、一番目立つところに飾られたマルチカラーストライプのジャケット&パンツ。それだけでも斬新なことこのうえないのに、何の意味があるのやら、「北島三郎の品」とダメ押しが。素晴らしい……。

 大阪万歳!