久しぶりにカラオケなど…

お医者さんやお気遣いのメールをくださった方々に感謝するばかりなのですが、夜遊びができるくらいに体が回復しています。「夜遊び」と言っても月に1度あるかないか。お酒はもちろん飲みません(ガンになるはるか前から飲んでいないのです)し、23時ごろにはタクシーに乗って帰宅しますので、まあまあ常識的な範囲かなと。それでも、お店でジャスミン茶を飲みながらお友達とお話するのは、健康だった頃の私にとって不可欠な時間でしたので、感慨もひとしおです。

 

私が開腹手術を受けたことを知らなかった友人(あまりたくさんの人には言っていなかったのです。余計な心配かけるのも本意ではないし)に、薄くなりつつあるお腹の傷をチラ見せして「おしゃれなステッチでしょ」と言っても、それがギャグの範疇に収まるのも嬉しいもの。健康になりつつあるからこそ可能な会話ですから。もちろん、今後も油断せず、治療を進めていきますが。

 

今回の夜遊びは、友人のセッティングで、ある超人気作詞家の先生とご一緒させていただく幸運に恵まれました。で、私ったらノンアルコールでまったくのシラフなのに「印税補完計画」と題し、その先生の作品をご本人の前で何曲か歌うという暴挙に…。ほら、カラオケって、歌ったら印税が作詞者・作曲者に入るって言いますでしょう…?

 

いま思い返してみても「なんとまあ恥知らずな…」とも思いますが、こういうチャンスは二度とないかもしれないわけで、「いい思い出になったかも」とちょっとほのぼの。このアンビバレントな感覚、まさに「はんぶん不思議」…。

 

その先生のお名前、勘のいい方ならもうお分かりですよね…(笑)。

 

ペネロペ・クルスとボーヤン・ジン、そしてペドロ・アルモドバル

フィギュアスケート欧州選手権や全米選手権を楽しみつつ、久しぶりにGYAOをチェックしてみたら、ペドロ・アルモドバル監督の『ボルベール』が無料公開されているのを知りました。

gyao.yahoo.co.jp

ペドロ・アルモドバルは、現役の映画監督の中でもっとも好きな人のひとり。同時にこの映画はペネロペ・クルスの最高傑作だと個人的に思っています。

優しさ、強さ、逞しさ、大胆さ、したたかさと少しの図々しさ。八方ふさがりかと思ってしまうような状況にあっても、「困ったときはお互い様じゃない」と、どこかあっけらかんと周りの女性たちと助け合いつつ、人生をわたっていく明るさが、アルモドバル作品の持ち味である美しい色彩の中で跳ねまくります。

そして、そんな極彩色の「陽」の中にある哀しみ。娘を愛する母であり、同時に、母の愛を求める娘でもあるライムンダ(ペネロペ)の姿に涙…。

パワーと繊細さの両方を一緒に出せる役者でなければ出来ない演技を惜しみなく披露しているペネロペに、いまだにハリウッドは「主役の男性キャラの横で華を添える」みたいな美人役ばかり振るのがもどかしくて仕方なかったりもします。まだ『ボルベール』は見たことがない、という方は、お金もかからない今のうちにご覧になってみてはいかがでしょう。

 

そういえば、ボーヤン・ジンの今季のフリーはアルモドバル監督の『トーク・トゥ・ハー』の曲を使っていますね。2月に出す本の中でも触れていますが、『トーク・トゥ・ハー』は、ものすごく重くてどんよりするテーマを扱った映画。ボーヤンがこの映画から曲を使うことを知ったときは本当に驚きました。ただ、スケーターのこうしたチャレンジを見ることができるのは、スケートファンとして大きな喜びでもあります。ボーヤンも世界選手権で会心の演技ができますことを!

 

金曜日にお昼寝をしてしまったせいか、ものすごく早起きしてしまいました。推定6人の読者の皆様の週末が充実したものでありますように。

 

体力増進計画は順調(告知を少々)

 4月に肝臓がんを切除するための開腹手術を受けて半年ほど。自分で想像していた以上に数値が上向き、それがいい感じで続いています。

 なんだかんだで肝臓がんとの付き合いも3年半。最初に告知されたときに「多発性の可能性がある」とちゃんと説明を受けていたので、いたちごっこは想定済みだし、「数値が安定している状態から、いきなり『えっ?』という急成長を遂げることもある」というのもこの3年で分かったので、精神的にも落ち着いています。仕事のことも含め、来年のことを現実的に、前向きに考えられるのって、本当に素敵。これが何年も続いてくれたらもっと素敵ですが、ま、足元の1歩1歩を楽しく進めていくことを重視しましょう。そうすることで、ここまで順調にきてるんだし。

 体力増進のためのウォーキングにとっても、いい時期でうれしいですね。20分くらい歩いても疲れないようになったし、すでに何度かお気に入りのレストランで(昔ほどの量ではないにせよ)食事を楽しんでいるし、体調を心配してくれる友人たちと楽しいおしゃべりの時間を持てるようにもなりました。彼ら、彼女たちのホッとした顔に、私もエネルギーをもらっています。素敵な循環よね。
 そうそう、スタンディングのイベントは申し訳ないと思いつつもお断りしていますが、「客席に座って観る」系のイベントには行きました。思ったよりも体に負担を感じなかったので、それも本当にうれしかった…。

 さて、10月の31日に、集英社スポルティーバから「Sportiva 羽生結弦 新世界を拓く」というムックが出ます。その巻末のエッセイを担当させていただくことになりました。

 私は「観戦するスポーツ」としてはフィギュアスケートが大好きです(自分でもするスポーツだとテニス。いつかテニスも再開させたいと野望を抱き中)。
「スポーツを観戦する喜び」は、そのスポーツに打ち込んでくれる選手たちがいるからこそ、成り立つもの。選手たちがいるからこそ、観客である私はこの喜びを受け取れる…、私はそう思っています。そんな思いをベースに、羽生結弦をはじめすべてのスケーターへの敬意を込めたつもりです。ご一読くださいましたら望外の喜びです。

 朝晩は少々冷え込むようになってきました。皆様どうぞくれぐれもご自愛くださいませね。

さざなみのよる

 木皿泉の『さざなみのよる』を再読中。初めて木皿作品にふれたのは『すいか』というドラマ。昔出した自分の本『愛は毒か 毒が愛か』にも、たぶんその感動を書き記したはず。
『さざなみのよる』は、NHKスペシャルドラマ『富士ファミリー』の続編的な位置づけと考えたらいいかしら。40代で亡くなったナスミと、その周りの人々が、さまざまな「モノ」で「想い」をつなげていく作品ね。自分が病を得てみると余計に沁みますわ…。

 病気持ちの身であることからいったん離れ、単純なる一読者として味わっても、さまざまな「モノ」のどれもが内側から輝いていく構成にうなるばかり。「ディテールに神が宿る」という言葉の、もっとも美しい具体例を見せていただいている思いです。未読の方は、これから始まる読書の秋に、ぜひ。

Sisters Are Doin’ It For Themselves

 好きな歌手が亡くなると、二丁目の店に行き、その歌手の持ち歌を歌って私なりの追悼をするのがここ10年くらいの習慣でした。でも、アレサ・フランクリンが亡くなったことを知ったとき、外出する気にはなれませんでした。

 病気になるはるか前からお酒は飲んでいないとはいえ、まだまだ夜遅くまで外出するのは体力的に難しい。それも大きな理由のひとつですが、「アレサの歌を歌えるはずがない」というのがもっと大きな理由かもしれません。私にとっては特別すぎるほど特別な歌手でした。

 歌う代わりに、ラブピースクラブのエッセイでアレサを偲びました。よかったらご一読ください。

美味しいものは残さずに

 4月の手術後、きちんとした外食に初トライ。最後まで美味しくいただけたのが嬉しい。池尻大橋にある『La Bitta』というイタリアンのジェノベーゼは、私が日本でいちばん好きなジェノベーゼ。香りが立ち上がるスピードも、その香気や旨みが口の中で広がっていく厚みやスピードも、ほかのお店とは格が違うという感じ…。

 美味しいものを美味しくいただける幸せを噛みしめ、美味しいものをご一緒できる友人たちに恵まれているのを噛みしめ、たぶんこれでますます元気になっていくはず…!