セレブ(笑)

 この2010年に木村拓哉が“セレブ社長”を演じた『月の恋人』。ポスターを見た友人から「木村拓哉だけどう見ても寸法がおかしい。他の4人とのバランスがありえない」というチクリが入ったり、定期的にかなり濃密なお肌の“メンテナンス”をしている木村拓哉のあごのラインが、今までのメンテではどうにもこうにも追いつかなくなってきてからのドラマという期待値があったり、と、放映までに数々のワクワクがあったのですが、意外と見られるドラマでした。
「キムタクはキムタクを演じることしかできない」という説は、もう十年近く言われていることなので、この際置いておくにしても、身長174センチのリン・チーリンが(貧しさの中で頑張る中国人、という設定とはいえ)キムタクとの二人芝居のシーンはペタンコ靴、あるいは裸足で通し、ピンヒールを履いてモデルとして登場したシーンでキムタクと並ぶシーンでは、身長差がまったくわからないようなカメラワークになってたる、という“キムタクカット割”も健在だったし。篠原涼子の役作りのリアルさやリン・チーリンの存在感にキムタクが思いっきり食われているのも予想通りといえば予想通りだったしね。
そうそう、“セレブ社長”の表現が、「オープンカーで成田までの高速を走っているのに髪型が崩れない」とか「ストレッチリムジンをベタに使う」というトンチキ加減だったのもさすがの一言。この2010年に『貞方スタイル』を見ているようだったわ。『貞方スタイル』とは、セレブ社長ブームの一翼を担った貞方邦介が、女性タレントを招いてセレブトークに花を咲かせる、2007年ごろの番組よ。天下の月9ドラマを見て、貞方スタイルを思い出すとは思わなかったわ。逆にキムタクに同情する始末よ。フジテレビってこんなにダサかったっけ? うふふ。
あ、そうそう、これもキムタクではなくスタッフのトンチキなのだけれど、「出張先でストレッチリムジンを出せるくらいの金持ちが、5月に上海蟹を楽しみにしている」というのは、失笑しか招きません。