悪意だ…悪意が澱んでる…

 子どもが大人への階段を上る第一歩は、大人への反発を覚えることである。
「大人って汚い……」
 そう思うとき、皮肉にも、子どもは大人に近づいているのだ。


 ……そんなことを言ったのは誰だったでしょうか。あたくしが初めてそう思ったのは、確認してみたら4歳のときでした。すでに20歳のころには「擦れた」なんて言葉では収まりがつかないほどのババアっぷりを体得にかかっていたあたくしにとりまして、「4歳」という年齢が早いのか遅いのかは分かりません。ただ、あたくしの場合、ほかの子どもたちと違うだろうことは、あたくしは親や親族や保育園の先生などといった「ごくごく身近な大人」に対してそう思ったのではなく、テレビの中の見えない大人に対してそう思ったのでした。

 さて、以前、ある友人と「悪意のあるカメラワーク」に関して話したことがございます。例えば、年齢を気にする女優を残酷なアングルばかりで映したり、木村拓哉を、キムタクより15センチは身長が高いのに座高が同じで顔が二回り小さい速水もこみちの横にずっと座らせておいて、ツーショットを頻繁に抜いてみせたり……。

 そんな「悪意あるカメラワーク」、あたくしと友人は、真っ先に例に挙げた物件がまったく同じでした。ええ、それはまさしく、あたくしが生まれて初めて「大人って汚い……」と、テレビの向こうのカメラマンに対して思った瞬間でもあったのです。

 その恐ろしい出来事は、74年の紅白歌合戦の最中に起こりました。35年前、いまよりもはるかにオーソドックスかつオーセンティックだった紅白で、その後35年間、他の追随を許さない悪意が炸裂し、日本の実に80%にあたる人々が固唾を呑んで見守っていたのです!

 サビ部分のカメラワークにご着目くださいませ。そしてできれば、この映像は、画面右下の「HQ」と「▲」の間にある「■」マークをクリックし、フル画面でご覧いただきたい…。
 年頃の少女の心に一生消えかねないトラウマを残したことが容易に想像できますわ……。NHKですらこうなのですもの、テレビって恐ろしいメディアよね……。