manuke but beautiful

 時は80年代後半から90年代前半、アタシが学生だったころ、「欲しいものはパリ」だの「アタシの夢? 世界を“素股”にかける女スパイ『股針(マタ・ハリ)』の2代目襲名。先代が誰かは知らないけど。自白剤をたっぷり塗った毒針を股間に仕込んで、各国要人から機密を残らず引き出すわ! ベッドルームまで持ち込めばこっちのもんよ!」だの、あれこれと話に花を咲かせた場所のひとつに「クラブ」があります。ここ最近のドラッグ報道でクラブが白眼視されかねない風潮になっているのはとっても悲しいわ。30代になったころから体力的な問題もあってクラブからは遠ざかってしまったから、現在のクラブ事情がどうなっているかは知らないけれど、ドラッグなどなくても、いえ、ドラッグで飛んでしまわなかったからこそ、そうしたトークや社交を心ゆくまで楽しめた空間が、アタシの若いころには確かにあったんだもの。知らないことを知ったふうに語るのは避けたいけれど、現在でも、クラブ好きな若い子たちのほとんどは、音を楽しみ踊りを楽しみ、お友達との語らい(時には色恋ごと)を、お酒と一緒に楽しんでいるだけだと思うし。

 日本各地の盆踊りやブラジルのサンバカーニバルを例に挙げるまでもなく、音にあわせて身体を動かす快楽はシラフで楽しめるわけじゃない?

 アタシが若いころは、そうねぇ、ガラージュ系のハウスを筆頭に、歌モノだとカイリー・ミノーグの『Step Back In Time』とかDee-Liteの『Groove is in the heart』とかがかかるともうダメだったわ。ゆらゆらとたゆたう感じで身体を動かし、疲れたらドリンクを片手にお友達とバカ話に興じて……。そんな時間が大好きだった。

 で、ゲイナイトになるとDJもオネエだから、そうした定番の曲の中に、時々とんでもない音源を挟み込んでくるのよね。そうした曲の、マヌケでイカシた感じをとことん味わって、爆笑しながら踊ってみるのも、意識がはっきりしていないとできないことなのよね。

 そんな「マヌケ&ビューティ」の横綱的1曲を、アタシどうしても忘れられなくて。同時期にクラブ体験をしていなかった友人にその曲の存在を話しても、「そんな曲あるはずがない」と一蹴されてしまうばかりなのがどうにも悔しくてね。そうしたらなんと、恐るべきyoutubeにどなたかがアップなさってるじゃない!

http://www.youtube.com/watch?v=KdtB6jpguY0

 こういう曲を楽しむ文化というものも、クラブには確かに存在したのです。いい時代だったわ……。