剣が峰とか徳俵とか

 4月にラブピースクラブのエッセイでしたためましたように、あたくし、6月27日のお茶会のため、ダイエットに励んでいた……はずでございました。 なのに、いったいどこであたくしは気づいてしまったのでしょう。

「あたくしが肥えたことなど読者の方々はまったく気にしない。それどころか、肥えたまま元に戻らないことを面白おかしく話したほうがサービスになる」と……。

 そして当日、4月に宣言した時点から5キロも落ちていない、ベスト体重からは12キロも多い状態で人前に姿を晒し、そしてやっぱり、読者の皆様方は「痩せなかったあたくし」に大喜びでございました……。

 その顛末をmixiの日記にアップしたら、案の定あたくしの友人たちまで大喜び。冷笑、哄笑、嘲笑と、さまざまな笑いが満ちましたが、温かみのある微笑はただのひとつもありませんでした。

 4月の段階で、「姐さんにはダイエットは絶対無理」と言い切り、あたくしに「吐いた唾飲まんとけ」と啖呵を切られた友人が、2日前、薄笑いを浮かべて言いました。「姐さんが見栄を張れるのは、読者ではなく、もっと近い存在に対してである」と。言われなくても、わかっておりますわ。ええ、あたくしの完全なる敗北でございます……。

 そして、あたくしが啖呵を切ったときにその友人が「負けたあかつきには是非これを」と切り返しで提案なさった賭けを受けるときがやってまいりました。

「あと3か月で12キロ落とせなかったときには、いちばん小さなサイズのビキニタイプの海パンを穿き、プロのカメラマンの腕で、ただでさえむっちりした体形が一層むっちりした体形に見えるように写真を撮ってもらい、大伸ばしして友人知人に配る」

 ええ、あたくしは64年前の日本さながら、大敗し無条件降伏したのですから、アメリカをはじめとした同盟国家の言うことは何でも聞かなくてはいけない立場であることはわかっております。が、「同盟国」と言えばあたくしの他の友人たちも同じこと。1人の「国家」の命令を聞く代わりに、ほかの数十人以上の「国家」の気分を害するわけにはいきません。

 というわけで、あたくしの実際の友人たちしかマイミクにいないmixiの日記で、「こんな賭けにあたくしが負けた場合、あなたがたはそんな写真もらいたくないでしょう?」とコメントを求めたのですが……開票1%で「当確」のマークがつく選挙速報のように、「見たい」という意見ばかりが連なるコメント欄がほんの1時間で画面に現れるというお約束。ある友人(ファッション誌編集者)にはいたっては「カメラマンとスタジオの手配ならまかせて。っていうか、ロケがいいならそう言ってね」と携帯のメールに送ってくる始末……。どういうことなんでしょうね……。