披露宴の主役は司会だったりすることもあるのよね

 お酒がなくても人生にまったく支障がないのですが、甘いものがなくなったら途端に禁断症状に襲われる、困った体質のアタシ。いちばん好きなパティスリーはイデミ・スギノ、とは言えほかにも好きなお店は何軒もあって、第二グループを形成している1店が、トシ・ヨロイヅカなの。4年前はけっこう恵比寿に通っていたわ。すぐに大行列ができる店になり、予約をしないと買えなくなってしまって、自然と足が遠のいてしまったけれど。
  
 さて、川島なお美トシ・ヨロイヅカのシェフパティシエ、鎧塚俊彦氏と披露宴を挙げました。1年半ほど前、ふたりの婚約のニュースを聞いた瞬間、「なお美が急に趣味性のステージを上げた!」と驚いたことを思い出すわ。だって、いままでなお美が関わってきた物件といえば、やや遅れて参入したのにいつの間にか「先駆者」としての自意識満々でトンチキな発言を繰り返した赤ワインブーム(「私の体はワインでできている」以上にアタシやマツコ・デラックスの琴線に触れたのは、ワインのテイスティングの際に放った「北欧の厳格な女子寮の寮長のような……」という喩え。カニバリズム……?)とか、小々夏(ココナツ)&史奈紋(シナモン)だったり(なお美が飼っている犬の名前です。夜露死苦)、「だん吉・なお美のおまけコーナー」だったり、もっとさかのぼれば青学在学中にカンニングがバレた際の泣きのコメントが「ごめんなさい……。反省してます……。反省してるので、ミスDJのお仕事はしばらくお休みします……」だったり、そんなのばかりだったんだもの。なのにあの「自分大好き」なメンタリティを隠そうともしない、いや、「隠す隠さない」という選択肢がこの世の中に存在していることなどまったく知らないだろう、なお美のありように、ここ数年はむしろ「あっぱれ」と思うようになっていたくらいだったのよ。

 なんて思いつつ、この間、ネットで調べ物をしていたら、トシ・ヨロイヅカの特集をしているHPに行き着きました。一瞬それが公式のHPだと勘違いしたアタシは、ドメイン名の『グランド・パティシエ』(偉大なパティシエ)に腰を抜かしかけたのですが、トシ・ヨロイヅカが自前で作っているHPではなく、ある企業だか団体だかがヤナギ・タダシ(最近あまり行ってないけど、こちらも大好きなパティシエです。特に好きなのはモガドール)とトシ・ヨロイヅカを取り上げているページだと分かってホッと一安心(どうやら更新は止まっているみたいね)。

 ところが、その安心も、HPのコンテンツをチェックすることで再び波立ってしまったわ。何はなくとも、自らの来し方を書き下ろしで綴ったという「CHEF’S STORY」は必見よ。内容ではなく、その分量! 68個もチャプターがあるのに、海外修行時代の話が終わってないの。ここまで自分語りがお好きな方だとは思わなかったわ。自意識の方向性、なお美とけっこう似てんじゃん……。

 そんな二人の披露宴、当然のように見所満載でした。新郎自らが製作したウェディングケーキが純然たる「トシ・ヨロイヅカ」のセンスと言うよりはどこかしら「なお美」のセンスに侵食されているように見えたり(なんでケーキで犬を作るのか……。とは言え、化学物質の合成工場で作られたようにしか見えなかったヤワラさんの毒々しい群青色地球ケーキよりは、食べ物に見える分はるかにマシだったけど)、友人のドラァグクイーンエスムラルダも指摘していたように「独占中継!」と銘打っておきながら『サプライズ』という通常のバラエティ番組の中に差し込まれるような作りになっていたおかげで、「へえ、美川憲一長山洋子ってくされ縁だったんだ」ということまで学習できたり、デヴィ夫人のブログで写真入りで紹介されていた、なお美の手をとる林真理子大先生が神々しいほどの光を放っていたり……。

 と言いながら、アタシにとってもっとも嬉しい発見は(そしてエスムさんがもっとも耳をそばだてた瞬間も)、司会の徳光和夫の素晴らしい性格であり、発言だったりしたんですけどね。ウェディングケーキを前に涙ながらに感動や新郎への感謝を述べるなお美の発言を受けきった後で、サラリと一言。

「新婦はどうしていいのかわからないほど喜んでおりますが、私たちにとってはすぐに忘却に結びつく、感動の一コマでした」

 素晴らしい……。この発言、500%以上の確率で確信犯だとアタシは思っています。「泣きの徳さん」なんて言われる人情家の仮面は大嘘です。仮に本当だとしても、そうねぇ、砂漠の中の一粒のダイヤモンドにすぎないわ。そしてもちろんアタシは、そんな大嘘の仮面をしゃらーっとかぶり続けて、今日も明日も来年も、そしてたぶん十年後だって巨人軍ネタや感動の再会ネタで泣いてみせる徳さんの計算高さが大好きよ……。