分け入っても分け入っても in FASHION

 常日頃から「ファッションヴィクティム」との自称を隠そうともしないあたくしのこと、シーズンごとのコレクションを見るのはいまだ大好きでございます。メンズのコレクションはもちろんですが、デザイナーたちがその技量を惜しみなく発揮するレディースのコレクションは輪をかけて大好き。見ていると時の経つのを忘れてしまいますわね。

 コレクションの楽しみといえば、最新の作品のチェックはもちろんですが、フィナーレに登場するデザイナーたちの押し出しの強さをチェックするのも欠かせません。ただでさえ自信満々なデザイナーに「世界的成功」という枕詞が加わるのです。押し出しが強くならないはずがございません。そのことは皆様もよくご存知のことと思います。

 そして、デザイナーがオカマであればあるほど、登場時の押し出しは強くなるもの。これも世界的な共通認識といえましょう。現在でいえば、やはりシャネルのカール・ラガーフェルド御大とディオールジョン・ガリアーノが両横綱ということになりましょうか。
(カール御大)
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ガリアーノ
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 後ろに控えた並み居るスーパーモデルを文字通りの「マネキン」扱いにし、「あたくしこそが主役よ」と言わんばかりの威圧感でカメラマンたちにキラールックをくれる立ち居振る舞い……。ゴルチエはその意味において、ややフレンドリーすぎるきらいがありますわね。ああ、ジャンニ・ヴェルサーチ……まったく惜しい人を亡くしたものですわ……。
ゴルチエ
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 さて、そんなフィナーレにおいて、日本人デザイナーはどうなのでしょうか。森英恵大先生は少々エレガントすぎ、三宅一生大先生は少々カジュアルすぎ、山本耀司大先生は少々浮世離れしすぎ、川久保玲大先生は天岩戸からお出になろうとなさりません。アジア人はやはり、「われがわれが」の精神に欠けているのかもしれませんわね。

 ……などと思ったあたくしは、やはり不勉強でした。パリやミラノ、ニューヨークのコレクションだけですべてを知った気になっていたあたくしが愚かだったという他ございません。ちょっと視線をワールドワイドにしてみれば、カール御大やガリアーノが消し飛んでしまうしまうほどのインパクトを持ったお方がいらっしゃったではありませんか!

 あたくしの目も心も奪ったデザイナーは、日本ではなく、韓国にいました。なんでも韓国では「世界的成功を収めたデザイナー」で通っている方だそうです。なんて不勉強なあたくし! パリやミラノ、ニューヨークのコレクションをけっこうしっかりチェックしていたつもりですのに、あたくしの情報網はザル同然だったのです……。

 その人の名は、アンドレ・キム大先生。素晴らしい……。

 あまりにも素晴らしいので、ぜひ皆様方には、グーグルの画像検索へ飛び、「アンドレ・キム」とご自身で入力していただきたい……。

 後退した頭部に塗りこまれた光沢感たっぷりのドーランは、ある意味で桂由美先生のお帽子系のヅラと同種のものといえますでしょう。そして、「いつでもどこでも白!」と全身で叫ぶがごとき真っ白な衣装(&お顔のドーラン)は、80年代の川久保玲大先生の「いつでもどこでも黒!」に匹敵する心意気。全盛期のソフィア・ローレンもかくやのアイメイクも含め、アンドレ大先生のセンスには敵いません。いいえ、「敵う敵わない」以前に、勝負する土俵がどこにあるのかさえ皆目見当がつかないあたくしは、いくらお金をつぎ込もうと、ファッション初心者でしかなかったのですわ……。モードの世界は奥が深すぎます……。