コーヒーは記憶力を高めてくれるんですってよ
いま、都内のとあるカフェで読書の真っ最中です。久しぶりに手にしたボールドウィンの『ジョヴァンニの部屋』。我が身の煮え切らなさを滔々と理論武装していく、主人公のうら寂しいナルシシズムにゾクゾクしております。ええ、自分のセクシュアリティを認めることができない段階では、人はしばしばこういった態度をとるのよね。あたくしにもかつてこんな時期はあったし、今現在、主人公デイヴィッドと同じような心理状態にいる、自分じゃノンケだと思っている人も多いのでしょう。これを読んだら、『もう一つの国』も再読してみようかしら……。
「そんな素敵な読書中に、どうして携帯を使って日記の更新などをしているのか」と思われた方にご説明いたします。あたくしの斜め左のテーブルにいる、おそらくは早稲田の男子学生2人組(さっき「政経」という単語が出ていた)が、就職試験用の問題を出し合っているのですが、彼らのアバンギャルドさといったら、『ジョヴァンニの部屋』の冒頭に登場する老年期の趣味女装にも匹敵するもので、あたくしさっきからページをめくる指がまったく止まったままなのです。彼らの口から「講談社」「フジテレビ」「電通」といった社名が出ておりますので、まあ「マスコミだったらどこでもいい」という、大変わかりやすいイマドキの学生たちなのでしょうが、大変です……。
まず、ある首都の名前を聞いて、その国を当てるという問題。
●カイロ
●テヘラン
●バグダット
●ナイロビ
●アンカラ
●コペンハーゲン
●キャンベラ
以上の都市、2人とも全滅です。
そして各都道府県を聞いて県庁所在地を答える問題。
●群馬
●島根
●大分
●栃木
●三重
以上、2人とも全滅です。
まだまだ衝撃は続きます。
●アカデミー賞の監督賞を受賞した人を選ぶ3択で、スコセッシとアン・リーを差し置いてメリル・ストリープを選ぶ。
●トム・フォードを自動車会社の大物だと思っていた。
●百人一首の『けふ九重に匂ひぬるかな』を『けふくえにくさひぬるかな』と詠んでいる。
●「うりかに、って何?漢字難しすぎるんだけど」とブーブー言っている。さらに耳を凝らすと「うりかにかんをたださず」との発言が。李下に冠を正さず……。
そして今、どうやらこの2人は英語のニュースを日本語に訳す問題にチャレンジ中ですが、「バンク……銀行……」と言ったきり沈黙してしまいました……。
ここまでくると、「いっそ何かの間違いで、どこかにするっと入ってくれないかしら」と熱望するばかりです……。最近、ゆとり教育の大幅な見直しが行われたそうですが、それも致し方ございませんわね……。