manger,parler

 何を食べても砂か粘土を噛んでいるようにしか感じられなかった時期を過ぎ、ようやく美味しいものを美味しいと思えるようになったここ最近。友人からの食事の誘いを自然に受けられるようになったのが嬉しい。大切な人の訃報を聞くまでは、「11月17日のトークショーまでにあと8kgは落とさなければ」などと思っていたけれど、まあ、こうなってしまった以上、しっかり食べて体力の回復を図ることを優先させなければいけない、と自分をどこまでも甘やかしていたり。って、こと食生活に関して自分に厳しくなることなど、数年に一度あればいいほうなのだけれど。

「弱っている人には奢る」という不文律のおかげで、友人たちがこぞって「月に1度通えるようになったら、自分を誉めていい」というレベルのお店に連れて行ってくれる。そこでさせていただくわがままが心地よい。

 あの人は、もう食べられない。あたしは、今日も食べる。美味しく食べる。そして、みんなとおしゃべりをする。そういったことのすべてをこれからずっと記憶にとどめて、いつかあたしも死ぬときに、先に逝った人たちに伝えることをたくさん貯めておきたい。「本当に、先に逝った人に会えるのか」と訊かれたら首を横に振るあたしだけれど、それでも、そう思って生きていく。

 明日は、何を食べようか。