残暑見舞

 よくなったと思ったら、またすぐにおかしくなる。そんな、認知症の初期段階(年齢的に他人事ではありません)のような夏風邪も、ようやく完治したと思えたのが、ほんの2〜3日前。皆様、ご体調はいかがでいらっしゃいますか。この時期にしては意外に涼しい日が続いた今年の夏、うっかりクーラーを平年並みの温度設定にしておくのは自殺行為ですわよ。

 あたくしの場合、4年ぶりに自宅に導入したクーラーに足元を見失ってしまったのが今回の夏風邪の敗因でした。ええ、生まれて初めての新幹線旅行や飛行機旅行で完全に舞い上がり、嬌声をあげながら通路を走り回った挙句に「便意=トイレ」という公式さえ頭に思い浮かべることなく半ズボンの中にウンコを漏らしてしまった3歳児のような失態を、この年齢で犯してしまったというわけです。「寒い=夏風邪」、これは当然の公式です……。

 あれは8月はじめのことでした。半身浴でたっぷり汗をかき、お風呂上りには全身化粧水まみれの状態で(92歳という年齢ゆえ、乾燥が大敵のあたくしは、身体にも化粧水をつけますの。ロート製薬の「極潤ヒアルロン酸」ですが)、キンキンに冷えたサンペレグリノを飲みながら、「20度ドライ」という室温設定で過ごすひとときを、1日の終わりの至福として心行くまで楽しんでいたあたくし。裸にシャネルのナンバー5だけを身につけて寝るモンローに対抗して、あたくしもそのまま、サンローランのオピウムオムを薄く吹き付けてから寝るのが常なのですが(もちろん部屋の温度を上げて)、あの日は少々疲れていたのでしょうか、ペレグリノを一気飲みした後、10分〜20分後に「28度&3時間タイマーで切れる」設定にする習慣も忘れ、そのまま丸々一晩寝てしまいました……。

 翌日の朝、あたくしは寒風吹きすさぶアイスランドで、何をしたかもわからぬまま素っ裸で放り出されて号泣しているところで目が覚めました。吹きすさぶ寒風だと思っていたのはエアコンの轟音……。肌を触ってみると、2月の厳寒期だって滅多に立たないような、くっきりと硬く粟立った鳥肌状態。そりゃあアイスランドにいる夢だって見るというものです。寒いというより、痛い。そこから始まった地獄の日々は、そりゃあつろうございました。

 まだまだ不安定な陽気が続くはず。推定6人の読者の皆様、どうぞくれぐれもご自愛くださいませね。