フィギュアマニア歴28年

 頚椎のヘルニアの調子が予想以上に大変なことになっております。手術を一瞬考えもしたものの、レーザーとはいえ首にメスが入ることにどうしても恐怖感が……。

 というわけで休日は完璧なオウチ族と化しているのですが、ほぼ寝たきりの状態で見たエリックボンパール杯浅田真央のチャレンジャーっぷりに大感激したので、肩から指先までしびれまくっているにもかかわらず、短い日記を書こうかと。

 ミスは何回かあったものの、プログラムの密度が恐ろしいことになっていました。要素として決められたステップだけでなく、コネクティングステップの質・量まで尋常じゃありません。彼女のフリー演技を見てアタシが思い出したのは、98年の長野オリンピックの男子シングルチャンピオン、イリヤ・クーリックの96−97年のシーズン(長野の1年前)のフリー演技『ロミオとジュリエット』。アタシが見た中で、旧採点時代のすべての男子選手のプログラムで1,2を争う鬼プログラムで、確かクーリックは、そのプログラムをノーミスで通したことがなかったような。世界選手権なんてメダル取れなかったくらいだし。

 で、その1年後、長野オリンピックでクーリックは『ラプソディ・イン・ブルー』をバックにフリーを演じたのだけれど、4回転トゥを入れる代わりにコネクティングステップの量がグッと減り、中盤では息を整えるかのような「滑っていない」パートも用意されたプログラムになっていた。トリプルルッツを飛ぶ際に空中で片手を挙げて難度を上げる(ボイタノルッツね)ことも、トリプルアクセルに入る前のイーグルも削っていた。1年前とは真逆の「ミニマムな動きでマキシマムな点数が取れる」プログラムに変更してきていたのよね。で、クーリックはノーミスで滑って金メダルを獲得したわけ。もちろん、4回転トゥ1回、トリプルアクセル2回(内1回はトリプルトゥとのコンボ)を含めた、すべてのジャンプを成功させることは並大抵のことではない、という大前提があるにせよ。

 ただ、96−97年の鬼プロのおかげで「こんな油断ならないエッジワークが4分半通して続く空恐ろしいプログラムを、滑る能力はある選手だ」と、世界中のジャッジが認識していたこともかなり大きいような気がするのよね。『ロミジュリ』、何回かミスをしても芸術点はものすごく出ていたし。その実績があったからこそ、プログラム全体の密度をかなり落とした98年の『ラプソディ・イン・ブルー』が長野でノーミスでまとまったとき、最終グループの第一滑走にもかかわらず芸術点で9人の審判のうち7人が「5.9」をつけるような大盤振る舞いになったように思うの。

 クーリックのコーチは、いまの浅田真央を指導しているタチアナ・タラソワマツコ・デラックス似)。もしタラソワが「マオにオリンピックで金メダルを取らせることこそがゴール」と思っているのなら、オリンピック前年のシーズンで、とんでもない密度のプログラムを世界中のジャッジに見せつけることも、計算のひとつとしてやっているのでは、と予測しているわ。エリックボンパールは2位だったけど、あのプログラムがまとまったら浅田真央に勝てる選手はいなくなると思う。仮に今シーズンの成績が思わしくなかったとしても、「100%の出来ならば、あんなレベルのプログラムが滑れる選手だ」という認識が出来上がっていることが大事。その認識がジャッジの間に浸透していれば、来季のプログラムを作る際には「欲しい点数がジャッジからきっちり出てくる」という選手になっている……。タラソワはそこまで考えて、あのドSなプログラムを作った……と勝手に期待しているわ。アタシ、タラソワのプログラム好きだからさ。特に、アイスダンスのグリシュク&プラトフのプログラム、あれは頭おかしいレベルよ(超ほめ言葉)。

 さて、ここまで書いて肩甲骨の裏に電気が走りまくり(別に安静にしてても走るときゃ走るけど)、頭もややボーッとしてきて、「痛い」以外の感覚を感じることが難しくなってきたので、日記はここまでに。しばらく更新はできないと思いますが、ま、「ヘルニアは命にかかわる系統の病気ではないから」と言い聞かせて養生に努めます。みなさんも、お体にはくれぐれもお気をつけくださいね。